2009年9月14日月曜日

チョコレートの記号としての明治ミルクチョコレート

| hamamatsucho | sep. 2009 |

2009年4月1日に、明治製菓と明治乳業の共同持ち株会社「明治ホールディングス」が誕生し、それに伴って製菓も乳業も共通の新ロゴになった。ただNational → Panasonicのようにいっせいに切り替えるのではなく、しばらくは新商品は新ロゴ、それ以外は旧ロゴのまま、両者が混在するという状態が続いていた。だから、旧ロゴを大きく使っているおなじみのミルクチョコレートのパッケージは今後どうなるのだろう、と漠然と考えていた。


それがついに、9月8日から明治製菓のあのおなじみのミルクチョコレートを含むチョコレートのパッケージがリニューアルされた。ポスターを見たとき、なにか、自分の知っている世界がひとつなくなってしまったかのような衝撃を受けた。


これまでのパッケージは1971年(昭和46年)にリニューアルされて以来、38年間使われてきたもの。亀倉雄策先生による「Meiji」ロゴが大きく、その下にやや小さく「Milk Chocolate」の文字がイタリックで入っていた。1955年から1971年まで用いられていたロゴ、パッケージもほぼ同じイメージであったので、そういう意味では半世紀ぶりのデザイン刷新といえる。すなわち、子供の頃からチョコレートを食べてきて、現在でもチョコレートを買うであろう大多数の人々が知っていたあのパッケージがなくなってしまったわけである。


こんな商品(↑)が成立していたのも、「あのパッケージ=チョコレート」という図式が成立していたからこそのことである。新商品を告知するポスターに衝撃を覚えるのは、そういう、我々にとってのチョコレートという記号、アイデンティティが失われてしまったように思われたからではないだろうか。

ロゴの変更によってパッケージの印象が劇的に変わるなか、ミルクチョコレートのTV CMでは、しばらく前から使われている「Open!」のサウンドロゴ、「チョコレイトは明治♪」のメロディー(1966年誕生だそうだ)が用いられていてブランドイメージの連続性を演出しているのだが、最初に視覚的な衝撃を受けてしまった私には、なにやら「家に帰ったら見知らぬ人たちそこにいて、自分たちが私の家族だと言い張っている」ような、逆に自分が何者なのか分からなってしまうような感覚に陥る。

ロッテクールミントガムのリニューアルにあたって佐藤卓氏は、店頭においてそれまでの顧客を迷わせないことを第一にデザイン要素を再構成したと語っていて、非常に説得力があった。それに対して、明治ミルクチョコレートのリニューアルは、これまでのユーザをすべてリセットするような、強力なものである。しかし、いったんリセットされたとしても顧客はよそへ行くのではなく、ふたたび戻ってくるという確信があっての選択だろう。ミルクチョコレートのあたらしいパッケージは、はたして私たちにとってふたたびチョコレートの記号となるだろうか。

| tokyo stn. | sep. 2009 |

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