2013年12月31日火曜日

展覧会回顧 2013

年末になるとどうやらアートクラスタ達は今年の展覧会ベストなどというものを選ぶのが通例のようで、わたくしも試みていようと思い立ちました。

今年もいろいろな展覧会を観ました。基本的に「つまらなかった」という展覧会はほとんどないのですが、「よく分からない」というものはたくさんありました。「よく分からない」というのは、「その分野に知識がない」ということであって、「つまらない」とか「くだらない」というものではありません。なのでそれらの中から10個選ぶというのはなかなか難しい作業なのですが、その展覧会を観たことをきっかけにいろいろと調べたり考えたりする機会を得た、ということを主な基準に選んでみました。そういう趣旨なので、作品が良かったというばかりではなく、企画が良かったとか、調べてみたくなった、というものを含んでいます。なお、展覧会を観た時期の順に挙げています。順位ではありません。

維新の洋画家──川村清雄
静岡県立美術館、2013/02/09~2013/03/27


昨年秋に江戸東京博物館で開催された展覧会の巡回展。江戸博でも観ましたし、目黒区美術館の「もうひとつの川村清雄展」も観ました。静岡まで追っかけたというわけです。おそらく、在京の人は、2012年の展覧会ベストに入れているのではないでしょうか。

じつはこの展覧会まで、川村清雄の名前も作品も知りませんでした。なのに、このウェブログに「川村清雄」カテゴリーを作ってしまいました。油彩の技法で日本画、という作品の面白さはもちろんのこと、なによりもその人物に魅了されました。詳しくは、ウェブログ記事で。


この展覧会の図録は美術館連絡協議会2012年の「優秀カタログ賞」を受賞しています。資料的価値も高い一冊。デザインは目黒区美術館の図録がずっと良いのですが、誤植が散見されるのが残念。


サラ・イレンベルガー+木之村美穂「Reality & Fantasy」
DIESEL ART GALLERY、2013/05/17~2013/08/16


ベルリンを拠点に、雑誌や広告のための立体イラストレーションやウィンドウ・ディスプレイなどのフィールドで活躍するサラ・イレンベルガーの写真とオブジェの作品展。モチーフと素材とのギャップからもたらされるユーモアとイメージの二重性に思わず微笑んでしまう。あまり素敵なので、作品集も買ってしまいました。このほかにも、DIESEL ART GALLERYはよい企画が多い場所です。無料ですし。きれいなお姉さんが丁寧に解説してくださいますし。



鈴木悦郎──エンゼル陶器の仕事
あるぴいの銀花ギャラリー、2013/07/03~2013/07/15


チラシの写真が素敵で、初めて訪れた小さなギャラリー。
『ひまわり』『それいゆ』を飾った鈴木悦郎の挿画は、武井武雄や初山滋の童画の系譜につらなる、どこかエキゾチックで素朴な線が印象的。

展覧会では、岐阜の「エンゼル陶器」で保存されていた陶磁器用の原画、版下などの展示と、復刻されたプリントのカップ、茶碗の販売が行われていた。このときは、関連する本を買っただけでしたが、12月に開催された展覧会で小鳥文様のカップを買いました。

展覧会を訪れたのは、初日の7月3日。後日知ったのですが、鈴木悦郎さんは8月5日に永眠されました。生前にお目にかかれなかったのが残念です。いつか大きな回顧展が開かれるといいのですが。


鳳が翔く──榮久庵憲司とGKの世界
世田谷美術館、2013/07/06~2013/09/01


言わずと知れた、プロダクト・デザイン界の大御所、榮久庵憲司の世界。ウェブログの文章が書きかけのまま放置してありますが、そのうち続きを書きます。とにかくですね、GKの作品展というよりは、榮久庵憲司の精神世界を見せる、ぶっとんだ展覧会でした。こんな展覧会、よく企画したものだと思います。
展覧会をきっかけに改めて調べてみたのですが、榮久庵さん自身が書いた本はいくつもあるのですが、榮久庵さんについて書かれたものはほとんどない。彼の仕事に対する批評がない。これはとても不思議なことです。



アンドレアス・グルスキー展
国立新美術館、2013/7/3〜2013/9/16


グルスキー展についてはウェブログに書きました。
写真の体裁をとりつつ、これは写真ではない、というのが私の感想です。もちろん、だからすごいのです。



浮遊するデザイン──倉俣史朗とともに
埼玉県立近代美術館、2013/07/06~2013/09/01


世田谷美術館の「榮久庵憲司展」とまったく同じ会期。果たしてどちらに多くの人が入ったのでしょうか。知名度の点では倉俣に軍配が挙がるように思います。どうでもいいことですが。

倉俣史朗の仕事はずっとよく分からなくて、今回の展覧会を観てもよく分からなかったのですが、なぜ分からないのかが少し分かったような気がします。おそらく彼の仕事はデザインというよりも、アートに近いのだと。


レイ・リケット バッグ展──BAG, ALL RIGHT!
世田谷文化生活情報センター:生活工房、2013/07/17~2013/08/25


「ハンカチとお財布が入るアート」。
余計な言葉はいりませぬ。面白い。楽しい。


時代が見えてくる──オキュパイドジャパンのおもちゃたち
杉並区立郷土博物館分館、2013/08/17~2013/12/01


イラストレーター高山文孝氏のコレクションにより、明治から昭和30年代頃までのおもちゃの変遷を見る展覧会。玩具はその意匠の点で時代を映すばかりではなく、素材、技術、市場や社会の変化に敏感に反応し、その姿を変えていく。いわゆる「デザイン」よりもずっと時代を反映していることが分かりました。ただノスタルジーに浸るだけではない。優れた調査研究をふまえたすばらしい企画です。

うさぎスマッシュ展──世界に触れる方法(デザイン)
東京都現代美術館、2013/10/03~2014/01/19


「クリティカル・デザイン」がキーワード。で、クリティカル・デザインとは何かと言えば、

抽象的な課題を具体的に把握させ、人々に思考や意識改革をうながし、行動や理論を誘発するデザインであり、現状をより強固にするアファーマティヴ・デザインの対極にあるものである。
『うさぎスマッシュ──世界に触れるアートとデザイン』、フィルムアート社、2013年、139頁。

アートとデザインの違いは何か、アートとデザインの接近とは何か、ということを考えさせてくれる展覧会でした。何も考えないで観ると、なにがなんだかさっぱり分からない系の展覧会ですが。



アマゾンで「うさぎスマッシュ」を検索すると、スプツニ子!さんの本もお勧めされる。いや、いいけど、未見。



川瀬巴水―生誕130年記念―
大田区立郷土博物館、2013/10/27〜2014/3/2

川瀬巴水生誕130年記念ということで、大田区立郷土博物館と千葉市美術館で川瀬巴水展が開かれています。NHK「日曜美術館」でも取り上げられました。千葉は未見ですが、大田区郷土博は何回か訪問。近所なので、年明けにも何回か行くつもりです。

日曜美術館および『最後の版元』(高木凛著、講談社、2013年)で知ったのですが、アップルの創業者スティーブ・ジョブスは新版画のコレクターで、巴水の版画もたくさん持っていたとのこと。へえ。

1984年、ジョブスがMacintoshを発表したときの写真。この中央のMacに映っているのが橋口五葉の版画《髪梳ける女》だったということは『最後の版元』で知りました。



巴水に対する現在の評価は、描かれた風景へのノスタルジーが中心のようですが、版画は芸術と言うよりも「商品」。商品であればそれが誰に売るために作られたのかを考える必要があります。じっさい、巴水版画の主要な版元であった渡邊庄三郎は、輸出向けの商品として新版画を制作していました。海外においてその作品が人気を博したのは当然のことといえましょう。

巴水については、改めてエントリを書こうと思っております。

 

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その他、気になった展覧会を挙げておきます。

松永真ポスター100展(ギンザ・グラフィック・ギャラリー、2013/01/09~2013/01/31)
秋岡芳夫全集1 秋岡芳夫とKAKの写真(目黒区美術館、2013/02/16~2013/03/24)
記憶写真──お父さんの撮った写真、面白いものが写ってますね(目黒区美術館、2013/02/16~2013/03/24)
明治の海外輸出と港(フェルケール博物館、2013/02/26~2013/04/07)
東京オリンピック1964 デザインプロジェクト(東京国立近代美術館、2013/02/13~2013/05/26)
デザインあ(21_21 DESIGN SIGHT、2013/4/13~2013/6/16)
暮らしと美術と高島屋──世田美が、百貨店のフタを開けてみた。(世田谷美術館、2013/04/20~2013/06/23)
奇跡のクラーク・コレクション(三菱一号館美術館、2013/02/09~2013/05/26)
カトウヨシオ「デザインのココロ」(Gallery 5610、2013/6/10〜6/18)
11ぴきのねこと馬場のぼるの世界展(うらわ美術館、2013/07/13~2013/09/01)
ふくいの面とまつり(福井県立歴史博物館、2013/07/19~2013/09/01)
「新・博多粋伝。」──織と人形の若いクリエーターたち(東京ミッドタウン・デザインハブ、2013/08/24~2013/09/08)
新世代アーティスト展 in Kawasaki「セカイがハンテンし、テイク」(川崎市市民ミュージアム、2013/07/20~2013/09/29)
ヤマハ株式会社 デザイン研究所50周年企画展「DESIGN RECIPE」(AXIS GALLERY、2013/10/30~2013/11/04)
新井コー児展(なびす画廊、2013/11/4〜2013/11/9)

思い出したらまた追加します。

しかしですね、いわゆるアートクラスタ達が挙げているもののうち、わたくしが観たものはほんのわずか。わたくしの観たもので、ベストに挙がっているものはほんのわずか。わたくしの観るものにはかなり偏りがあることが分かりました(笑)。

2013年10月15日火曜日

水飲み場:京成佐倉駅

これまで駅の水飲み場はあまりチェックしてこなかったのですが、たまに気が付くと面白いものがありますね。


| sakura | sep. 2013 |

推測ですが、公園の水飲みと違って、駅の水飲みの手洗い水栓はあくまでも業務用だと思われるのです。なにしろ、たいていの場合、非常に使いづらい位置に水栓があります。この水飲みだって、よほど腰をかがめなければ手が届きません。


| sakura | sep. 2013 |

頑張っても頭をぶつけてしまいそう。

荷物置きのようなスペースがあるのも、公園のものとは違う駅の水飲みの特徴のように思います。


| sakura | sep. 2013 |

それはさておき、この小さなタイルを貼り込んだ水飲み、いまや汚れて見る影もありませんが、できたときはきれいだったでしょうね。

2013年10月14日月曜日

水飲み場:福井県立恐竜博物館前

福井県立恐竜博物館前にあった人造石の水飲み場です。


| fukui | aug. 2013 |

逆方錐形という水飲み場の基本的形態ではありますが、手洗い水栓の下の凹みはなんでしょうね。


| fukui | aug. 2013 |

手を洗う人が誤って突き指をしないようにとか。


| fukui | aug. 2013 |

それにしても暑い夏でした。

2013年10月13日日曜日

水飲み場:金沢城下あたり

金沢城の下あたりにあった天然石の水飲み場です。
気が付いただけでも同じものが3箇所ありました。
もちろん天然石ですから、まったく同じという訳ではありません。


| kanazawa | aug. 2013 |

で、どういうわけだか、3箇所とも水飲み水栓が外されていました。


| kanazawa | aug. 2013 |

機能的には可もなく不可もなし、という構造ですね。


| kanazawa | aug. 2013 |

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こちらは水飲みの脇に大きな排水溝付です。


| kanazawa | aug. 2013 |

公園の排水のため、でしょうか。


| kanazawa | aug. 2013 |

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こちらはやや丸っこい形で、同じ水飲みとして良いかどうかと思いつつ、水飲みの水受けの形状が同じなので、同じとしておきます。


| kanazawa | aug. 2013 |

ただ、排水口の蓋のデザインがちがったり、石枠の組み方が違ったり。


| kanazawa | aug. 2013 |

となると、上の二つとは別のデザインとした方がよいのかしらん。

2013年10月12日土曜日

水飲み場:金沢・兼六園 02

水飲み場スポッティング出張版。
兼六園で見かけたもうひとつの水飲み場です。
こちらも素材は天然石?


| kanazawa | aug. 2013 |

水飲み場を囲む枠がかなり適当。
左側に排水用らしい塩ビパイプが見えますが、そのまま地面に吸い込まれる方が多そうですね。


| kanazawa | aug. 2013 |

水栓のハンドルが外されており、試すことはできませんでした。


| kanazawa | aug. 2013 |

水受けの下は4つの細長い石を束ねた形状。
想像ですが、内部はこのような構造になっているのではないでしょうか。



天然石の、似た構造物。



☞ 水飲み場:浦和・常磐公園


2013年10月11日金曜日

水飲み場:金沢・兼六園 01

水飲み場スポッティング出張版。
兼六園にある天然石の水飲み場です。


| kanazawa | aug. 2013 |

円形の水受けに十字の溝が彫ってあり……


| kanazawa | aug. 2013 |

……そこに小石がたまっています、


| kanazawa | aug. 2013 |

余った水はどこへ行くのかというと……


| kanazawa | aug. 2013 |

どうやら側面に開いた穴から排出される構造のようです。


| kanazawa | aug. 2013 |