2009年10月27日火曜日

21_21:「THE OUTLINE 見えていない輪郭」展

21_21の展覧会に行くたびに年間メンバーシップになるかどうか迷う。年4回訪れるならペイするのだが、果たしてどうだろう。さんざん迷ったあげく、100円割引券があったのでそれを利用することにして今回も見送ってしまった。

「THE OUTLINE 見えていない輪郭」展は、深澤直人氏のプロダクト+藤井保氏による写真。



21_21 DESIGN SIGHT-「THE OUTLINE 見えていない輪郭」展
http://www.2121designsight.jp/outline/index.html

「骨」展、そして「SENSEWARE」展と、このところ21_21の展覧会はどちらかといえば実験的、動的な展示が続いたが、今回の展覧会は非常にスタティックであったように思う。その理由は、もちろん深澤プロダクトの完成度――収まるべきところにきちんと収まったカタチ――にもあるが、展示されているプロダクトがすでに世に出たものであること、写真――ある特定の時間と場を切り取ったもの――のふたつが主役のせいでもある。

ふたつが主役と書いたが、この展覧会では、プロダクトと写真、どちらが主なのか。ポスターに写真が使われているから写真が主役なのか。

展覧会というのはエディトリアルである。あるいは演出である。場合によっては秩序も関連もないかも知れないものを、あるひとつの視点でまとめ上げ、提示する作業である。芝居の舞台に演出家が出てこないように、ふつうの展覧会ではこの作業はあまり表に出てこないので、我々はただ役者たる作品を鑑賞している気分になるが、じっさいには丹念な作業を経て編集/演出されたストーリーのもとでモノを見ている。しかし、今回の展覧会では編集/演出という行為それ自体が作品として展示されている。「見えていない輪郭」という視点を提示する藤井保氏の写真を通じて、プロダクトを見るしかけだ。

ここでの「輪郭」は平面図のそれではない。それらのプロダクトに接している日々、さまざまな角度から目に映る、その姿を形づくる立体的、空間的な輪郭である。家具、家電、日用品の多くは、色彩や、素材や、機能の側面が記号として意識に入ってくるが、視角に捉えられる一瞬、一瞬のカタチ、輪郭――すなわち美しさの理由――は、なかなか意識に上らない。藤井氏の写真は、その意識に上らない=見えていない輪郭を、浮かび上がらせるガイドなのだと思う。だから、舞台のアナロジーで言うならば、藤井氏の写真は演出であり、主役はやはりプロダクト、ということになろうか。もちろん、私たちは「演出された役者」を見るのだから、そのどちらが主というものではない。

比較的小さなプロダクトは、照明を入れた乳白色アクリルの上に展示されている。逆光になるので、プロダクトを見せるにはあまりいい展示ではないと最初は思ったのだが、これもじつは「輪郭」を見せるための演出なのだと思う。写真は特定の位置からの静的な視角を提示する。そして実際のプロダクトの展示は、見る者が視点を移動させることで、さまざまな「輪郭」を見せる。

会場の構成もよかった。高い天井、無機質で静謐な空間が個々のプロダクトの輪郭を際だたせていると思う。訪れるなら、なるべく人が少ない時間帯を狙うのがよい。混雑すると「展示会」になってしまう危うさがある。

展示されている椅子の一部は実際に腰を掛けることができる。キッチンユニットにも触れることができる。だから、携帯電話やボールペンなどのプロダクトも、手に取ってみることができればよかった。

今回の展示を見て、私たちのまわりには「見えていない輪郭」がたくさんあると思った。同じ方法で、たとえば100円ショップのプロダクトの輪郭を捉えてみても面白いのではないか。

帰ってきて、展覧会の印象を反芻していたらもう一度見に行きたくなった。だから年間メンバーシップを購入しておくべきだったのだよ。


| 21_21 | oct. 2009 |

世界のフカサワも登場する「objectified」、日本語版DVDの発売が待たれます。

公園遊具:矢口南児童公園の羊と猫


| potan park | oct. 2009 |

ここは浅葉克己先生がお守りやら、LOVE神社の碑やら、石の卓球台やらを手掛けられた新田神社の向かい。

passerby/ 浅葉克己:新田神社
http://tokyopasserby.blogspot.com/2009/09/blog-post_4369.html

神社と同じく「多摩川アートラインプロジェクト」の一環として整備された児童遊園。

多摩川アートラインプロジェクト - 児童公園がオープンしました!!
http://tamagawa-art-line.jp/2009/04/post_64.html

ここには渡辺元佳氏による「ぽたん」という羊が3頭います(下丸子駅ホームにも兄弟がいます)。


| potan park | oct. 2009 |

児童公園のプロジェクト施工風景↓。

多摩川アートラインプロジェクト - 児童公園が生まれかわります!
http://tamagawa-art-line.jp/2009/02/post_60.html

下丸子駅の兄弟は↓。

多摩川アートラインプロジェクト - 渡辺元佳「 ぽ た ん 」
http://tamagawa-art-line.jp/2007/10/botan.html
※リンク先のファイル名が「botan.html」になっていますし、本文にも「ぼたん」という綴りがありますが、「ぽたん」だと思います。


| potan park | oct. 2009 |


| potan park | oct. 2009 |


| potan park | oct. 2009 |

私にしては珍しく猫がむこうからこちらの様子を見にきました。


| potan park | oct. 2009 |

児童公園なのに、煙草の吸い殻がたくさん落ちていていけません。


| potan park | oct. 2009 |

ん、誰か来た。


| potan park | oct. 2009 |

人間の子供がやってきたので、とりあえず退散です。


| potan park | oct. 2009 |

えさやり禁止、と読めばよいのでしょうか。看板もしっかりデザインされています。ただ園内の様子をみると、斬新な「禁煙」表示も開発する必要がありましょう。


| potan park | oct. 2009 |

沿線に住んでいながら、まだ多摩川アートラインプロジェクトのすべてをきちんと見ていません。時間をとって巡ってみたいと思います。


| potan park | oct. 2009 |

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20091203 羊の写真を追加。

デザインハブ:GOOD DESIGN EXHIBITION 2009



第18回企画展:「GOOD DESIGN EXHIBITION 2009」








結論。手で触れることができる展覧会はよい。
※ガンダムはさわれませんが。


| midtown | oct. 2009|

2009年10月26日月曜日

戸板関子:家庭顧問(2)

10月8日のエントリで、戸板関子先生による家庭の相談事のコラムのことを書いた。

戸板関子:家庭顧問
http://tokyopasserby.blogspot.com/2009/10/blog-post_08.html

1922年9月18日の読売新聞のコラムは、その回答にとてもインパクトがあったのだが、どうも最初から、あるいはすべてにおいてあの調子であったわけではないようだ(あたりまえか)。

コラムをいくつかピックアップして読んでみたのだが、戸板先生の下にはじつにさまざまな相談事、たずね事が寄せられていて、いずれにも先生は真摯に回答を寄せられているのである。

「家庭顧問」の記念すべき第一回(番号は付いていないが)は、1920年(大正9年)5月5日であった。「よみうり婦人欄」というページの連載コラムである。


『読売新聞』1922年9月18日朝刊04面、家庭顧問:戸板關子

(記者より)今度、三田高等女學校校長、戸板裁縫女學校長戸板關子女史にお願ひして家庭生活の常識について顧問になつて頂きました。日常の事柄に關して續續御質問をお寄せ下さい。

とあり、質問内容は、

【問】慶弔時の水引の結び方の注意をお教へ下さいませ(文子)
【問】私の家は硝子窓が沢山ありますが、簡便な清め方を知りたいと存じます(愛讀者)
【問】近く新築の家に移りますが柱や縁側に光沢の出し方をお教へ下さい(清子)

とまあ、家事や料理、裁縫を教える女学校の先生向きにありそうな相談事で、戸板先生もとても丁寧に答えているのである(画像参照)。

その後も
1920年5月9日
【問】煙草盆の進め方は如何するのが本當でせう、近頃他所様へ伺つて注意して見ますが、まちまちの様です、お教示下さい(千枝子)
【問】フォークとナイフの遣ひ方の普通的なのをお教示下さいませ(乙女)

1920年5月16日
【問】暑さに向かひますが、鶏卵の簡單な見分け方をお教示下さいませ(君子)
【問】お祝ひに頂きました鰹節が一二ヵ月では使用致しきれません長く貯へると蟲が付くので困りますが、何とかよい貯蔵法はありますまいか(牛込の主婦)
【問】乳が多く、着物に汚點がついて困りますが、よいしみ抜法をお伺ひ致し度う御座います(乳母)

というように、家庭生活でのさまざまな内容についての質問と回答が掲載されている。

少しばかり可笑しいと思うのは、まったく関係ない複数の質問が一緒に書かれていたりする例である。

1920年5月25日
【問】目上、同等、目下の三者に対する書翰の認[したた]め方及び一般に書翰紙の折り畳方を御高教下さい、同時に、寝具布団の正式なる畳方も御教へ下さい(愛讀生)

1920年8月8日
【問】揮発油の家庭的利用法を可及的廣くお教へ下さい、同時に重寶[ちょうほう]な竈[かまど]および食器入兼用の鼠不入[ねずみいらず]の名稱をお教へ下さい(とみ子)
【答】……鼠入らずでよくわかります外に名稱に付研究するほどの價値ある問題とも思はれません。

質問と回答は現在でもありそうなものも多いのだが、その時代の生活ならではのものも見受けられる。

1920年5月31日
【問】腐敗した御飯の利用法をお教へ下さい(春子)
【答】腐敗にも程度がありますが大抵のものであつたら、能く清水で洗ひ天日に乾し、煎鍋[いりなべ]で煎り別に黒豆を煎つて混ぜ、白砂糖をまぶしておくと、お茶受けにもお子様のお三時[やつ]にもなります

1920年7月26日
【問】冷蔵器を作らせ度いと思ひますが、外気との絶縁物は何が一番有効なのでせう 御教示ください(愛讀者)
【答】冷蔵庫をおつくりになるに外気と絶縁するものはやはり木が一番よろしいでせう、そして隙間の無いやうにする為中に羅紗の布を張るが宜しう御座います、若しご自分のお家でめつたに御移轉などなさらぬ方でしたら、臺所の便宜の場所を三尺許り[ばかり]掘つて、四方と底に煉瓦を積みセメントを塗り蓋は木製にして置きますと氷を入れないでも始終ひやひやとして大変工合が宜しう御座います、……ビールやサイダーはぢかに置いて宜しう御座いますが他の食物は簀の子の臺をつくつて其上に載せて置くが宜しう御座います

1920年12月23日
【問】潔癖症の男ですが消毒殺菌の事をする處がありませうか(執望生)
【答】本所に立派な消毒所があります町名は警視廳の衛生課に問はれるとわかります

1922年10月16日
【問】古新聞の活用法を教へて下さい賣るのは安くていけません
【答】古新聞賣却が安價で惜しく思し召すなら高價になるまで大切に保存なさい、新聞紙は数年たつても紙魚[しみ]はつきません、新聞紙の利用としては包紙が一番適役です

この項つづく。

2009年10月25日日曜日

ブリジストン美術館:「うみのいろ うみのかたち」:アンドレ・ロート

ブリジストン美術館のテーマ展示「うみのいろ うみのかたち」を見に行く。


ブリジストン美術館と石橋美術館のコレクションの中から、「海」をテーマにした作品が選ばれ、「かたち」「いろ」「モティーフ」「イメージ」でくくる。

ブリヂストン美術館 | BRIDGESTONE MUSEUM OF ART

古賀春江の作品が3点。「海水浴の女」(1923年)、「涯しなき逃避」(1930年)、「感傷の静脈」(1931年)。いずれも初見。

とても良かったもの=アンドレ・ロート「海浜」André Lhote, Seashore (1922年頃)。
浜辺に横たわる二人の女性。向こうにはわずかに海が見える。二人に掛かる大きな影は、パラソルのものか。

wikipediaによると「古賀春江など多くの日本人画家に影響を与えたという」とある。なるほど、好きな画家のルーツは同じなのだ。

アンドレ・ロート - Wikipedia

André Lhote
1885-1962

French painter of figure subjects, portraits, landscape and still life; also very influential as a teacher and writer on art. Born in Bordeaux. Apprenticed in 1897 to an ornamental sculptor, and also studied decorative sculpture from 1898-1904 at the Ecole des Beaux-Arts in Bordeaux; began to paint in his spare time. Left the sculpture studio in 1905 to devote himself to painting. Influenced by Gauguin, then from 1910 by C-23zanne. First one-man exhibition at the Galerie Druet, Paris, 1910. Joined the Cubist movement in 1911; exhibited in 1912 at the Salon de la Section d'Or. Applied Cubist stylisation as a formal discipline to scenes from everyday life. In 1917, after discharge from the army, became one of the Cubist group supported by L-23once Rosenberg; also began to write regularly for the Nouvelle Revue Fran-25aise. Taught at the Acad-23mie Notre-Dame des Champs 1918-20 and afterwards at various other art schools, including one he founded in Montparnasse. Wrote a number of books on art, including La Peinture. Le Cour et l'Esprit 1933 and Trait-23 du Paysage 1939. Died in Paris.

Tate Collection | André Lhote

ブリジストン美術館のサイトには作品は掲載されていないが、別のところに非常によく似た似た構図の作品があった。


ANDRE LHOTE "LA PLAGE"
OIL ON CANVAS, SIGNED
FRANCE, C. 1920


※テートギャラリーの文章は一部文字化けしているようだ。

2009年10月24日土曜日

東京都庭園美術館:「 パリに咲いた古伊万里の華」展:歴史への視点




「日本磁器ヨーロッパ輸出350周年記念 パリに咲いた古伊万里の華」展
2009年10月10日(土)~12月23日(水)
東京都庭園美術館(白金)

今年10月15日は、日本磁器が初めてヨーロッパに向けて公式に輸出されてから350年目に当たります。本展はこれを記念し、ヨーロッパに渡った古伊万里を蒐集した碓井コレクションの中から、選りすぐりの名品を紹介します。

http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/koimari/index.html

1659年にオランダ東インド会社が長崎から日本磁器をヨーロッパに最初に出荷して今年で350年だそうだ。年だけではなく日付まで特定されているのだが、これは旧暦ではないだろうかとも思う。

出展作品はすべて「碓井文夫」氏のコレクションから。展覧会は次の4つの局面に分けて構成されている。

第1章 欧州輸出の始まりと活況(寛文様式、1660年~70年代)
第2章 好評を博した日本磁器の優美(延宝様式、1670~90年代)
第3章 宮殿を飾る絢爛豪華な大作(元禄様式、1690~1730年)
第4章 欧州輸出の衰退(享保様式、1730~50年)

展覧会終了までにもう一度見に行こうと思っているのだが、とりあえずの印象。

同じ出来事であっても、それを誰の視点から見るかによってストーリーは大きく異なってくる。たとえば、獲物を追いかけるライオンと、追いかけられるシマウマと、客観的にはひとつの出来事であっても、どちらの視点から見るかによって、物語はまったく違うものになるはずだ。もちろん、どちらの視点から追ってもいいのだが、それらが混在すると見ているほうは混乱してしまう。そんなことを考えた。

今回の展覧会では、その意味での視点が3通りあったように思う。①磁器の生産、輸出国である有田。②国際的なマーケットにおける中国と日本の動向。③東洋磁器の需要国であるヨーロッパである。

展覧会の構成自体は、国際的なマーケットの動向を背景とした日本磁器のヨーロッパへの輸出であり、それが前述の通り4つの局面に分けられている。

展示されている製品自体は、ヨーロッパで蒐集されたもの。すなわち、ヨーロッパにおける日本磁器受容の証人である。しかし、個々の製品に付された解説は、主に絵付けなどの技術的解説で、すなわち生産国日本の事情なのである。

訪れた日は体調がすぐれなかったこともあり、これらの3つの関連がよく理解できなかった。再訪の折りにはもっとしっかり見たい。


| teien museum | aug. 2009 |

1994年にパリに生活の拠点を移して以来、わずかな期間に1000点に及ぶ古伊万里を蒐集した「碓井文夫」氏とはどのような人物なのだろうか。図録に寄せられた文章を読んでも分からない。

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20091204 碓井文夫氏についてのメモ

「パリに咲いた古伊万里の華」展:個人蒐集家
http://tokyopasserby.blogspot.com/2009/12/blog-post_4827.html

2009年10月22日木曜日

ダイソン エアマルチプライアー:あえてダメ出ししてみる

[祝]2010年度グッドデザイン大賞
リモコンも付きましたし、着実に進化していますね。
このエントリを書いた1年前と比べて買わないための理由が減ってしまって、困っています(笑)。
(2010年11月10日追記)

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このエントリは、2009年10月、エアマルチプライアーの発表を受けて書いたもので、実際に体験してのものではありません。
体験レビューにつきましては、はスタパ齋藤氏の「長期レビュー ダイソン「エアマルチプライアー」 その1 - 家電Watch」などをご参考にされることをお勧めします。

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ダイソンから発表された羽のない扇風機。そのビジュアル的なインパクトもあって、いろいろ話題になっているようである。



Dyson Air Multiplier™ fan | Dyson.co.uk
http://www.dyson.co.uk/fans/

ダイソンが羽根のない扇風機「エアマルチプライヤー」を発表 | エキサイトイズム
http://www.excite.co.jp/ism/concierge/rid_9747/pid_2.html

私はダイソンの掃除機の愛用者でもあり、今回の製品にもかなり物欲を刺激されている。同社のHPで原理解説も読んだ。発表会の記事や、ブロガーたちの反応も見た。で、ポジティブな評価がとても多いようなので、ここでは2点ほど、あえて重箱の隅をつつくようなダメ出しをしてみる。といっても、実際に触ってみたわけではないので、写真や動画から想像される範囲だけなのだが。

▼ユニバーサルなのか

一般的に、扇風機は床に設置される。そしてその操作系は台座に配置されることがほとんどである。その位置は、通常の人間の動線からはかなり外れている。だから、扇風機を操作するため、人はかなり無理な動きを強いられる。立ったり座ったり、腰をかがめたりという動作は歳をとってくると結構な負担。そもそもなぜこの私が扇風機に跪かなくてはいけなくて?

で、たいへん行儀が悪いということは認識しつつも、足の指をリモートコントローラとして利用するのだ。足の指は手の指よりも太く、また繊細な操作には適していない。だから操作系は大きく、確実なものでなければならない。言ってみれば、この要求に対応するということは、かなりユニバーサルなデザインが実現されているということになる。

ダイソンの掃除機DC8を愛用しているが、日本の掃除機とは違って、これには手元スイッチがない。本体にON/OFFスイッチがあるだけである。でも、これが大きく、確実に押せるものなので、爪先でも簡単に操作できる。掃除機に跪く必要はない。スバラシイ。(というか、あたりまえ。)

「エアマルチプライアー」はどうなのか。本体とツラを合わせた小さな電源と首振りのスイッチ。風量調整はボリューム式のツマミである。足の指による操作に適しているようには思われない。しかも、これらの操作系は扇風機の首振りと一緒に回転してしまうのだ。同社HPで仕様等を見たが、リモコンは存在しないようだ。つまり、操作のためには跪く必要がある。しかもボタンは小さい。


じつはサー・ジェイムズ・ダイソンは日本の扇風機を研究していないようだ(日本のサイトでも本家UKのサイトでも、ダイソンHPで比較に出てくる画像は、日本でも良く見るタイプの扇風機なのだが)。


この扇風機が日本の風土、気候にあうかはつかってみないと分かりませんが、少なくともダイソン氏が「(日本の)扇風機ははじめて見る」という発言をしたことから、日本の風土・気候は余り考慮されていないことでしょう。それに夏が終わって秋風が吹くこの季節に扇風機の発表っていうのも、なんとも日本離れしてますね。

ダイソン AirMultiplierは飛鳥の生まれ変わり ([の] のまのしわざ)
http://nomano.shiwaza.com/tnoma/blog/archives/007130.html

欧米では室内でも靴を履いて生活しているわけで、足の指での微妙な操作はあり得ないのは確か。ただ、リモコンを附属する、あるいは操作系をトップに配置するという解決策は有り得たのではないかと思うのだが。

なお、冬も迫るこの時期になぜこの製品を発表したのか、という記者の質問にダイソン氏は「開発が終了したのがこのタイミングだったから。私はビジネスマンではなくデザイナーなので、販売時期がいつがいいかとは考えていない」と答えている。

ダイソン、羽のない扇風機「Air Multiplier」を国内発表 - 家電Watch
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20091016_322189.html

天才的なプロダクトはこのようにして創られるのですな。いやはや、なんとも。

▼メインテナンス

ダイソンHPでは掃除のしやすさが訴えられている。動画で比較されているのは、日本でも見るタイプの扇風機だ。従来の扇風機は羽根にホコリが付く。掃除にはカバーを取り外したりと、手間が掛かる。しかし、羽のないダイソンの「エアマルチプライアー」は、表面をさっと一拭きするだけでいい。



たしかにすばらしい、と一瞬思うのだが、ちょっと考えるとこの比較はおかしい。扇風機の羽根を掃除するのは見た目のこともあるが、羽根にホコリが付くと空気の流れが悪くなって効率が落ち、風切り音が大きくなるからだ。「エアマルチプライアー」の吸気スリット、内部、送風部にはホコリが付かないのか。いや、床置きしたPCの内部を覗いたことのある人なら、どんなことになるか想像がつくだろう。いやいや、空気清浄機が室内の埃をキレイにしてくれるその理屈を考えれば、大変なことになることは想像に難くない。そのとき、どのようにメインテナンスするのか。

そんなわけで、不安な部分を並べてみることで、私はポチッとしたくなる衝動を一生懸命抑えているのだ。

※写真と画像はダイソン社ホームページから。スイッチ部の写真のみexciteの記事からお借りしました。

2009年10月21日水曜日

ザ・トーキョー・タワーズ:集合住宅の色彩

THE TOKYO TOWERS(ザ・トーキョー・タワーズ)とは、首都圏において第1号の再開発会社施工となった勝どき六丁目地区第一種市街地再開発事業による、ツインタワー超高層マンションの総称である。2008年1月竣工時において、分譲マンションとして階層(地上58階)は国内最高階層となり、高さ(193.5メートル)は大阪市港区のクロスタワー大阪ベイ(地上54階、200.3メートル)に次ぐ。

THE TOKYO TOWERS - Wikipedia(2009年10月18日取得)
→http://ja.wikipedia.org/wiki/THE_TOKYO_TOWERS


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

電車に乗っているときはたいてい窓から外の風景を眺めている。毎日通るルートでも街は日々変わるし、すべてのものが視界に入ってくるわけではないから、そのたびごとに発見がある。天気が変われば風景は変わるし、駅のボードに張り出された広告も頻繁にかわる。だいたい、駅や街を歩いている人びとは一瞬一瞬異なるわけで、全く同じ風景を見ることなどまずあり得ないのだ。だから飽きずに眺めている。

そんななか、いつものルートから見える風景に以前から気になる高層マンションがあった。

遠くから見ると、壁の一部が崩れたような、皮をむいたような外壁に見える。あれはカラーリングなのか、それとも本当に壁面に段差が付いているのか。その日毎に印象は少しずつ異なり、遠くから見ているだけではよくわからない。

車窓から見える風景をじっさいに確かめに行くことはなかなかないのだが(キリがないのだ)、Y氏のブログでこれが勝どきにある「ザ・トーキョー・タワーズ」というマンションであるということを教わり、晴れた日に行ってみた。

やっとかめ どっとこむ / 晴れた日には永遠が見える
http://yattokame.exblog.jp/12109300/


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

遠くから見て皮をむいたように見える外観は、単に色による表現だけではなく、外壁に設けられた張り出しによって生じる影の効果でもある。


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

それゆえ、見る場所や太陽の位置によってその印象がかなり変わってみえるのだ、ということがわかった。


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

| kachidoki 6 | oct. 2009 |

逆に本来の建物のフォルム自体は、奇抜なところはなく、むしろ単純であることがわかる。


| kachidoki 6 | oct. 2009 |


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

集合住宅の色彩計画も最近はずいぶんと多様である。


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

ザ・トーキョー・タワーズと道を挟んで都営アパートがあり、こちらもなかなか趣深い。そのシンプルさもそれはそれで好きなのだが、色彩次第で住む人はもっと幸せになれるのではないかとも思う。


| kachidoki 6 | oct. 2009 |


| kachidoki | oct. 2009 |


| kachidoki 6 | oct. 2009 |

「ザ・トーキョー・タワーズ」は自分のエントリの写真にもすでに写っていた。目の前に見えていたはずであるし、写真にも写っていたのに気が付かなかった。

passerby/ 水飲み場:竹芝埠頭
http://tokyopasserby.blogspot.com/2009/09/blog-post_15.html

気になっているものがいつも意識の上にあるわけではないのか。

2009年10月20日火曜日

似ているもの、いくつか。

横浜駅の近くを歩いていて、なんとなく視界の隅に捉えながらも通り過ぎ、あれっと思って引き返した。


目をこすって見直してみた。


| yokohama | oct. 2009 |

参考画像(↓)。


傾向は違うが、ひとつでは寂しいのでそのほかも。


| yokohama | oct. 2009 |


| liverpool | sep. 2004 |



Mと丸は相性がいいらしい。


| okamoto taro museum | sep. 2009 |




まあ、こういう連想の力はオヤジギャグと同根なのだよな……

「物事を関連づける能力」。そう、そういう言いかたもありますね。このエントリとはあまり関係ありませんが(↓)。

ブレストとか。 - ポエトリー・デザイン
http://blog.goo.ne.jp/buffalo1970/e/4170d535389328efa9f3ee0c64bb03f8


※マンドリル画像は「夕刊河馬 雑記帳 / マンドリルのお勉強」からお借りしました。
※リヴァプールの「M」マークは、「Merseyrail」という鉄道のもの。ということで、「みなとみらい線」と完全にかぶっている。

2009年10月18日日曜日

寄藤文平:「KIT25」展:イラストレーションのビジネスモデル


| waseda | oct. 2009 |


寄藤文平「KIT25」展
2009年9月24日(木)~10月25日(日)
@btf(勝どき)
http://www.shopbtf.com/at/tenran_090924.html

バタフライ・ストローク(中央区新富1)が勝どきの倉庫ビルで運営するセレクトショップとイベントスペース「@btf」(勝どき2、TEL 03-5144-0330)で9月24日より、アートディレクター・寄藤文平さんによるイラストレーション展「KIT25」を開催する。
日本たばこ産業「大人たばこ養成講座」や、リクルートのフリーマガジン「R25」のイラストのほか、池谷裕二さん、糸井重里さん著「海馬」の装幀などで知られる寄藤さん。多くの広告や著書を手がけてきたが、今回初となるイラストレーション展の開催を迎える。
同展では、東京メトロのマナー広告などのイラストレーションや「R25」のイラスト画を展示するほか、同展のポスター(50,000円)や寄藤さんのイラスト入り2010年特製カレンダー(2,500円)、アーティストとのオリジナルコラボTシャツ(1万7,000円)などのグッズ販売も行う。

「R25」でおなじみのイラストレーター初個展-勝どき「@btf」で - 銀座経済新聞
http://ginza.keizai.biz/headline/1012/

恥ずかしながらお名前は存じ上げませんでした。「R25」の表紙イラスト、JT、東京メトロのマナーポスターシリーズは印象に残っています。公共広告のインパクトは非常に大きいですね。

1973年長野県生まれ。
1998年ヨリフジデザイン事務所、2000年有限会社文平銀座設立。
Bunpei Ginza Ltd.
→http://www.bunpei.com/


作品から想像していたよりも若い方です。シニカルなタッチから、もう少し年配だと勝手に思っていました。

展覧会タイトルの「KIT25」は、

このイラストレーションが、水平線に対し、斜めに走る直線の角度が25度になる二等角投影図法(ダイメトリック)で、描かれていることに由来します。
……
この角度は、奥行きと全体像を同時に表せるという点でとてもバランスが良い角度で、シミュレーションゲームなどでも採用されています。全てのパーツが、この角度を基準に制作されており、当初は25度キットと呼んでいました。
(展覧会ブックレットより)


このシステムによって、寄藤氏はイラストレーションのためのパーツ/KITを開発したのです。

自由に構成できるユニット式のキャラクターというと、グルーヴィジョンズの「チャッピー」を思い出します。ただ、KIT25の場合は、人物だけではなく、ディメンションを併せてキット化した点がとても面白い発想です。規格は共通化されており、組み合わせることで、さまざまな空間を作りあげることができるのです。

そればかりではありません。このKIT25はビジネスとしても興味深い試みになっています。KIT25は「貸し出し方式のイラストレーション」なのです。著作権は寄藤氏が持つ。

そういってしまえば、単なるキャラクタービジネスのようですが、ちょっと違います。クライアント(エディター)には、キットとしてイラストレーションが「貸し出される」。クライアントはそれを自分で自由に組み合わせて展開していいのだそうです。

もちろん、あらゆるシーンに対応できるキットが揃っているわけではないのですから、クライアントの求めに応じてパーツは追加されてゆく。ただ、人物は人形のように関節を動かせるように造られているそうです。

通常のオーダーメイドのイラストレーションという側面と、キャラクタービジネスの側面が混じり合っています。ただ、オーダーメイドであっても、使われたキットは作者のもとに戻ってくるのです。ですので、それはまた別の仕事に「貸し出す」ことができる。

「2000年に解説図用に考案」して以来、10年間で「1000個近いアイテムと、数え切れないパーツ」がそろったそうです。展覧会場で販売されている特製ブックレットにはその数々が収録されています。

展示作品と会場風景はこちらで紹介されています。「デザイナー、イラストレーター(志望含む)、編集者必見」だそうです。

寄藤文平氏 初のイラストレーション展「KIT25」@btf (フクヘン。- 雑誌ブルータス副編集長、鈴木芳雄のブログ)
http://fukuhen.lammfromm.jp/2009/10/kit25btf.html

寄藤氏へのインタビュー(2006年)

GA info.:creator's file :寄藤文平
PDF版
http://biz.toppan.co.jp/gainfo/cf/yorifuji/cf_14_1.pdf
http://biz.toppan.co.jp/gainfo/cf/yorifuji/cf_14_2.pdf


寄藤氏へのインタビュー(2007年)

第3回 寄藤 文平|憧れのあの人は、どうやってあの仕事に就いたの!? | アートスクールガイド(※サイト入り口は閉鎖されていますが、記事は生きているようです。)
http://school.bijutsu.co.jp/artist/interview/03/20070622/
http://school.bijutsu.co.jp/artist/interview/03/20070629/
http://school.bijutsu.co.jp/artist/interview/03/20070706/

こちらも。

寄藤文平「クリエーターズ・インタビュー」  株式会社イー・スピリット
http://www.c-interview.com/13.html

寄藤 文平、待望のインタビュー(portfolio 全国のクリエイターが創る一冊のアートブック:おそらく2006年)
http://www.designerbank.net/service/interview/yorifujibunpei.html

話はヨコにそれますが、寄藤氏へのインタビューを読み比べてみると、もちろんスペースや時間の都合もあるのでしょうけれども、インタビュアーの才能の違いが分かります。同じような質問内容でも、相手から引き出される言葉がまったく違うのです。GA info.とアートスクールガイド(美術出版社)のインタビューがお勧めです。

会場では寄藤氏の手書きイラストメモが多数販売されいます。小さいもの105円、A4判1050円。サインはないとのことですが、コレクターの方は是非。


| waseda | oct. 2009 |

※今回のエントリは文体を「ですます」にしてみました。
※ブックレットなどの記述を参考に書いていますが、一部筆者の解釈も含まれています。