森永ミルクキャラメル：エンゼルは男の子？それとも女の子？

『読売新聞』、1957年02月06日、朝刊03面。

エンゼルに性別がある、なんて考えたこともなかった。日頃眼にするエンゼルの多くは子供の姿をしており、中性的な姿がシンボル化されている、という認識であった。たとえおちんちんが描かれていなかったとしても、それが女の子を意味するとは思わないでしょう？

Wikipediaによれば、エンジェル＝天使とは「『旧約聖書』・『新約聖書』においては、翼など持たず普通の人と変わらない、成人男性か、若い男子青年の姿で現れる。または姿が見えない。姿が見える場合も、男性の姿であると考えられている」。

しかし、「近世以降、無垢な子供の姿や、女性的な姿、やさしい男性の姿を取って表現されるようになった。これはルネサンス期にローマ神話のクピド（女神ウェヌスの子である愛の神）からイメージを借りたとされる。場合によっては童子の顔と翼だけで身体を持たない姿に描かれることもある」。

天使 - Wikipedia
→http://ja.wikipedia.org/wiki/天使

森永のエンゼルも含め、ふつうの人びとの抱く天使のイメージは、後者の、すなわち近世以降に成立したイメージであることが多いのではないだろうか。成人の姿で描かれるときはとうぜん性別が現れるが、男性であっても猛々しい男性ということはなく、子供の姿と同様、中性的なイメージであるようだ。

なので、あえて性別を明確にすることもなかろうと思うのだが、1957年に森永はエンゼルの性別を題材に豪華懸賞を行っている。ちなみに、ペコちゃんの年齢が懸賞で決まったのがその翌年1958年である（→こちら記事参照）。

『読売新聞」、1957年03月29日、夕刊04面。

サテ　森永のエンゼルは　男の子？　それとも　女の子？
みなさんはどっちに見えますか？
ご家族でたくさんお出し下さい

松島トモ子君
「森永のエンゼルはモチロン女の子よだって頭がオカツパじやないの」
小畑やすし君
「僕はダンゼン男の子だと思うよだつてあんなに元気よく逆立ちしてる位だモン」

ちなみに、小畑やすしについて調べてみると……

小畑やすしは、昭和30年前後、映画「さざえさん」「たん子たん吉珍道中」「少年探偵団」などの作品で可愛いというより美しい子役スターとして人気を博しました。少年雑誌の表紙を飾ったこともあるようです。映画「赤いカンナの花咲けば」では、共演した松島トモコと共に主題歌も録音しています。これは、一言でいえば、コテコテの甘ったるい童謡歌唱です。しかし、このような歌唱法は、当時の童謡歌手に求められたものであり、指導者の指示通りに忠実に歌ったという感じがします。
なお、小畑やすしは、中学進学後芸能界を引退。現在は、商社マンとして活躍されているようです。

日本のソリスト
→http://www5d.biglobe.ne.jp/~yakata/japan%20solist.htm
2009年10月2日取得

なるほど、映画共演者のふたりということですか。

『赤いカンナの花咲けば』は、東宝の映画で、1955年の公開。

赤いカンナの花咲けば(1955) - goo 映画

一部の新聞縮刷版しかあたっていないが、パターンを変えたいくつもの広告が当時の新聞に（おそらく雑誌にも）掲載されたようである。

『読売新聞』、1957年05月18日、夕刊05面。

『読売新聞』、1957年06月12日、朝刊09面。

↑ このように描かれたら、男の子にしか見えない……

『森永製菓100年史』、2000年8月、195頁。

そして、結果。

『朝日新聞』、1957年07月19日朝刊07面。

男の子：2,454,583票、女の子：1,897,813票で、「森永のエンゼルは 男の子が多数でした！」。32,674票もの「其の他」はなんでしょう？　やはり中性という応募だろうか。

この懸賞の応募数4,385,070票は、当時の世界記録だそうだ（『森永製菓100年史』、195頁）。翌年行われた「ペコちゃん」の年齢を決める懸賞の応募総数が1,669,150通であったので、その2.6倍である。

さて、ペコちゃんは自由に動くキャラクターであり、年齢設定によってそのイメージがより具体的になるというメリットがある。しかし、森永のトレードマークであるエンゼルの性別を決めて、なにかいいことはあるのだろうか？

結果発表の広告には次のように書かれている。

皆さまから こんなにかわいがつていただけて ほんとに幸せだとおもいます　さて　男の子に見えるという方が多かつたからつて急に「エンゼルは男の子だよ」なんていいません　今までと同じ皆さまのエンゼルです　そして私がいるところには　オイシサとタノシサが　きつとあることをお約束いたします　森永のエンゼルより

なにやら、とても微妙である。

森永の社史にもこの懸賞の反響の大きさが記されているのだが、じつはその結果についてはなにも書かれていない。結果発表でも「男の子が多数でした！」とあるだけで、男の子に決まった、とは書かれていない。ネットを検索しても、この件に関する記述を見つけることはできなかった。ようするに、これは「あなたにはどちらに見えますか」ということを主題にした、懸賞のためだけのテーマ設定であり、そもそも性別を決めることは意図していなかったということになろうか。

調べてみたものの、その結末にどうもモヤモヤするのである。

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追記20091007

社史には結果が書かれていなかったが、森永製菓のWEB上の広告ギャラリーに記述を発見した。

森永ミュージアム
→http://www.morinaga.co.jp/museum/index.html

ミルクキャラメルの広告ギャラリー
→http://www.morinaga.co.jp/caramel/

そのほか、直リンクであるが、

http://www.morinaga.co.jp/caramel/koukoku/side53.htm
http://www.morinaga.co.jp/caramel/koukoku/side77.htm