2009年9月6日日曜日

カプセル・ホテル:問題解決手段としてのデザイン

デザイン【design】
(1)下絵。素描。図案。
(2)意匠計画。生活に必要な製品を製作するにあたり、その材質・機能・技術および美的造形性などの諸要素と、生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。「建築―」「衣服を―する」
(広辞苑から)

「9h」ホテルについて、柳本浩市氏が「どこかしっくりこないところがあり、後々それが膨らんできました」と書いている。

9hと朝市 | metabolism (2009.8.26 http://metabolism.jugem.jp/?eid=609

より安価に、より快適に夜を過ごすことができるようになった現在、なぜカプセルホテルなのか、ということが、柳本氏の問題意識である。たしかにAXISでの展示会を訪れた人たちは、カプセルホテルが抱える問題をデザインが解決する可能性を見たことであろう。しかし、柳本氏の意見は、それが表面的な問題のみの解決に留まっているのではないかということだと思われる。

たしかに、表面的、あるいは問題の一部の解決という点では、今回の展示会は素晴らしい提案をしていたと思うのである。しかし、その問題設定には極めて限定された条件設定があるように思われる。すなわち、今回デザインが応えているのは「利用可能な宿泊施設がカプセルホテルしかなかった場合に、選択してもらえるホテル」という課題なのではないか、ということである。これがデザインに与えられた課題ならば、充実したアメニティ、快適なカプセルユニットなどは、十分な答になっている。しかし、ほんとうにそれが問題なのだろうか。

別エントリでも記したとおり(→こちら)、周囲には同程度の金額で泊まることができるビジネスホテルがある。そこではプライベートな空間、ベッド、ユニットバスを占有できる。そのような施設に対して、カプセルホテルはデザインによって優位性を提案しうるのだろうか。

良いデザインとはなにか、と問われたとき、私は「問題を、造形的な手段によってよりよく解決しているデザイン」というように答えるだろう。ただし、これは対クライアントとしての「良いデザイン」である。社会的に良いデザインであるかどうかは、あるいは消費者にとって良いデザインであるかどうかは、クライアント、そしてデザインにたずさわる者が、問題を正しく認識し、設定できているかどうかに関わっている。デザイナーがどんなに頑張っても、クライアントの認識、問題設定が間違っていたら、そのデザインは社会的にもビジネス的にも失敗である。

デザインはさまざまな問題を解決できる、と思う。しかし、その問題設定が正しいかどうかは、それとは別のことである。「9h」はデザインに対して「宿泊」についての本質的な問題を提示できたであろうか。柳本氏と同様、私もしっくりしないものを感じている。

カプセル・ホテル
http://tokyopasserby.blogspot.com/2009/08/blog-post_22.html

続・カプセルホテル
http://tokyopasserby.blogspot.com/2009/09/blog-post_8076.html

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