2月半ばに松濤美術館を訪ねたおりに、受付で表の水飲み場について尋ねたところ、すぐに学芸員さんを呼んでくれました。学芸員さんによれば、これは水飲みと思われる。使いかたはよくわからない。少なくともこの10年は機能していない、ということでした。
汐留ミュージアムで白井晟一展が開催されているためか、ここのところ建築としての松濤美術館を訪ねて来られる方が多いそうです。新橋からは銀座線で一本ですしね。このあいだは汐留から10人の団体さんが来たとのこと。学芸員さんもそのような方たちへの応対には慣れているようで、水飲みについて質問するだけのつもりであった私に、建物の中も案内してくれました。感謝。
建築ツウの方たちならばすでにご存じのことばかりだと思いますが、構造もさておき、細部に興味惹かれました。
水飲みの水栓もそうですが、白井晟一は至るところにオリジナルのオブジェを配しているようです。
親和銀行別館(懐霄館)ではスプリンクラーもオリジナルだとか(『日経アーキテクチュア』2008/9/8、54-57頁)。
この案内パネルもそう(↓)。
表示部分が柔らかい磁石のパネルでできていて、剥がすことができる。表と裏には別の内容がプリントされてるので、裏返せば別の案内に。
また、磁石なので↓のように鉄製の防火扉に貼り付けることもできる。
とても便利に使っていますと、学芸員さん。
本体は琺瑯製だと思います。
破損しているものもあるのだけれども、すでに修理してくれるところがない、ということでした。
階段室の照明もオリジナルですが、これは静岡の石水館(静岡市立芹沢銈介美術館)でも使われているとのこと。
噴水は既製品を使ってオリジナルの構成にしているとか。
松濤美術館には何度も来ていますが、建物を観察するのは初めてです。
床の色、素材がフロアごとに違います、とか、
トイレの内装もすべて異なっています、とか、
トイレの扉に貼ってある表示は去年つくった新しいものでオリジナルだけど1000円位だった、とか(笑)、
へえー、とか、ほー、とか言いながら案内していただきました。
汐留の白井晟一展に出品されている松濤美術館の図面は、設計初期のもの。館長室の場所などは現状と異なりますが、開館時から建物にはほとんど手が入っていないそうです。どの段階で水飲み場が設置されたのか、興味ありますね。
見せてはもらえなかったのですが、館長室はすごいらしいです。
何がすごいのかというと、調度類。
おそろしい額を費やしているそう。金額も聞きましたが渋谷区民が憤るといけませんので伏せておきます。昔の話ですから。でも、どんなものなのかは見てみたい。
金額については、親和銀行本店のすごい調度類について、社史ですでに読んでいた私の感想は、まあそんなものかと。
* * *
松濤美術館を訪れたこの日、地下会場では「松濤美術館公募展」が開催されていました。展示されていた作品のなかに、イラストレーター田代卓さんの作品を発見!
水飲み場の話を聞きに行っただけだったのに、いろいろ得した気分です。
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