2011年12月25日日曜日

目黒区美術館:秋岡芳夫展



DOMA秋岡芳夫展 -モノへの思想と関係のデザイン
2011/10/29〜2011/12/25
目黒区美術館

開催前から評判の高かった展覧会。そして開催中も、デザイナー、それもデザインと工芸のはざまで仕事をしている人びと間で話題になっていたようです。私はその名前、仕事を知らなかったことが恥ずかしい。とても良い展覧会でしたし、秋岡芳夫関連資料の調査も途上のようなので、続編を期待したい。


| meguro | nov. 2011 |

まず最初は、秋岡が晩年に作り続けていた竹とんぼ、そして彼の仕事場の家具が出迎えてくれる。2階に上がると、1950年代から始まる工業デザインの仕事。そして学研『科学』の実験セット等。1970年代にそれまでの工業デザインから、クラフトを中心とするプロジェクトの提案活動へと転換。そして「道具」の蒐集。最後の展示室は時間を遡り、童画や銅版画作品等の仕事。

展覧会図録は秋岡の仕事をクロノロジカルに掲載しているのだが、展示はそれにこだわらない。とても良い構成で、図録もそれに従っても良かったのではないかと思われる。いや、資料としては時系列が正しいのか。

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いろいろと分からないことがある。

分からないことの最大のものは、1970年代に入ってからの転換。「消費者から愛用者へ」とか、「立ち止まったデザイナー」とか、「関係のデザイン」とか。展覧会を見た人びとは、おそらく彼のこの思想に共感しているのだと思われるし、私もそうなのだが、彼はいったいどのようにしてそのような思想へと至ったのか、それがよく分からない。分からないから、11月のはじめに展覧会を見てから、ずっと考えている。

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分からないことのもう一つは、秋岡は生涯にデザインとその周辺でいろいろな仕事を手掛けているのだが、それらが同時並行的ではなく、時代々々で関心が移り変わっているように見えること。「立ち止まったデザイナー」秋岡芳夫は、しばしば立ち止まり、デザインと自分の来し方行く末を見つめ直していたのだろうか。

戦後初期、秋岡は1946年から日本童画会に所属し、1954年頃まで積極的に関わっていたという。今回の展覧会に出品されていた作品のうちでも、〈水族館〉(1950年)がとても楽しい。大きな水槽の中で泳いでいるのは人間の子供たち。それを周囲で眺めているのは動物たち。カンガルー、鹿、犬、猿、熊、キリン、馬……。水族館の入口の窓口嬢は鶏だ。入場料は10円と掲げられている。壁に貼られたポスターは人間の男女の図解か。とてもとてもシュール。


『秋岡芳夫展図録』目黒区美術館、2011年10月、34頁。

秋岡は初山滋に私淑していたと図録に書かれていたが、なるほど。内容も表現スタイルもすばらしいので、個人的にはこの仕事をもっと続けていて欲しかったとも思う。他にも作品があるならば、ぜひ、「秋岡芳夫の童画」という展覧会も企画して欲しい。


| meguro | nov. 2011 |

分かった気にさせるよりも、分からないことがあるということを知ることができる企画のほうがよい。それは人に考える機会を与えてくれるから。

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図録やチラシ、バナーなどのデザインは「中野デザイン事務所」。「世界を変えるデザイン」展(DESIGN HUB:2010/05/15〜06/13、AXIS GALLERY:2010/05/28〜06/13)のために、すばらしいグラフィックを作った事務所。今回の仕事も、今後の仕事も注目。

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