2010年5月30日日曜日

世界を変えるデザイン展:課題を可視化する

途上国における諸問題をデザインによって解決しようとする試みを紹介する「世界を変えるデザイン展」。

まだAXIS会場は見ていませんが、デザインハブ会場には2回行きました。展示されているプロダクトについてはいろいろな方が感想を書かれると思いますので、ここでは違う視点からメモランダム。


| roppongi | may 2010 |

展覧会の趣旨は↓のリンクをご覧ください。

世界を変えるデザイン展
東京ミッドタウンDESIGN HUB:5月15日(土)〜6月13日(日)
AXIS GALLERY:5月28日(土)〜6月13日(日)

http://exhibition.bop-design.com/

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デザインハブ会場入口壁に掲げられた説明パネルがとても優れています。



visualisation
世界の課題

本展覧会の導入として、世界中に存在する様々な課題を見渡すため、
water | food | energy | health | housing | mobility | education | connectivity
の8つの課題を切り口に“世界の課題”の可視化を試みる。

とあり、続いて

process 1. 各国の人口を円の大きさで表す。
process 2. 日本を基準とした座標を設定する。
process 3. 座標上に円をマッピングする。

という手順を経て、課題別に8つのダイヤグラムが並びます。



座標のX軸は各国の平均年収。左側に行くほど高く、右側が低い。
Y軸は日本を0として、8つの課題の程度差を国別にプロットする。
諸国は人口に応じて大きさの違う円で表されており、課題を抱える人口の規模も同時に表現されている。
また、円の色は地域を表しており、8つの課題がどのような地域に集中しているのかを見ることができる。
すなわち、2次元の座標でありながら、ここでは4つの情報を同時に見渡すことができるのです。すばらしい。
ダイアグラムはこの展覧会のためのオリジナルなのでしょうか。



正しいデザインは課題の正しい把握から。この会場の見所は、どのプロダクトよりも課題を可視化したこのパネルでしょう。

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他方で、ちょっと気になったのはプロダクトを展示している台とプロジェクターのスクリーンです。



展示台は木製のパレットを組み合わせたような構造。スクリーンは半透明のプラスチックを合わせた板。誤解を恐れずに云うならば、私は金持ちが貧乏人の振りをしているような印象を感じました。



入口のパネル「世界の課題」は、日本を基準として世界の課題がどのような位置づけにあるのかを示しています。多くの国は座標の右下にプロットされています。つまり、日本より平均年収が低く、水や食糧、教育等々の基本的なインフラに不自由している国々が、今回展示されているプロダクトのターゲットです。逆に言えば、それらのターゲットとなる国々を基準とすれば、日本は常にはるか左上にプロットされるのです。

私たちは、六本木ミッドタウンという最新のインテリジェントビルの展示会場で、ここには存在しない課題を解決するためのプロダクトを、高みから観賞しているわけです。私たちの周囲の環境と、展示されているプロダクトがターゲットとする世界との間には大きなギャップがあります。しかしながら、この展示台やスクリーンは、その本質的なギャップの存在を覆い隠しているのではないかという印象を受けました。

問題が私たちから離れたものであるばあい、おそらく表現としては、擬似的にその場を体験するか、われわれと問題とのギャップを強調するか、ふたつの手法から選択することになるでしょう。今回の展覧会は前者なのですが、それが中途半端なために、むしろ事の本質を覆い隠す結果になってしまっているように感じたわけです。展覧会の趣旨としてはもっとギャップを強調するようなものであっても良かったのではないでしょうか。

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展示されているプロダクトについても少し。

展示されているプロダクトのうち、彼らが自ら工夫し、自分たちでつくりだせるタイプのものは一部です。「課題の可視化」における日本を基準とした座標軸が暗示するように、ここに展示されたプロダクトは、彼らをわれわれに近づけるための道具です。このような思想はけっして否定しませんが、途上国の発展にはさまざまな道筋が存在することも合わせて示しておく必要があろうかと思いました。

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アクシス会場も見ました。
デザインハブ会場とはかなり印象が変わります。


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ダイアグラムの制作は「中野デザイン事務所」だそうです。

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