東京ミッドタウン・デザインハブ(構成機関 : 公益財団法人日本デザイン振興会、社団法人日本グラフィックデザイナー協会、武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ)では、2013年5月16日(木)から6月11日(火)までの期間、東京ミッドタウン・デザインハブ特別展「未来を変えるデザイン展」を日本財団との共催により開催します。この展覧会は「2030年、様々な社会問題を企業はどう解決しているのか」という視点に立ち、各企業の取り組みを紹介するもので、19社の展示を行います。
このデザイン展では、会場全体を作品として来場者に体験させるインスタレーションで表現することにより、来場者は2030年の世界における社会課題とその課題解決に向けた各企業の対策を体験することができます。
6月8日土曜日に会場を訪れたところ、多くの若者たちで賑わっていて、ゆっくり見られなさそうでしたので再訪を期す。そして最終日11日の午後に再訪したものの、この日は12時まで。なんと間抜けなことでしょうか。
さて、企画は2013年の現在の課題と、2030年における解決の方向を示すというもの。こちらの勝手な期待だったのですが、2010年に開催された「世界を変えるデザイン展」と同様なものを考えていたのですが、まったく違いました。「世界を変えるデザイン展」がプロダクトという実体をベースにした問題解決の方法を示していたのに対して、「未来を変えるデザイン展」は、ビジネスモデル。「世界を変えるデザイン展」が現実の問題の中ですでに試行錯誤を続けているプロジェクトであるのに対して、「未来を変えるデザイン展」は17年後の企業のあり方を考えるワークショップの研究発表会。
「デザインなの?」という疑問もなくはありませんが、最近ではこのようなビジネスモデルの構想にもデザインという言葉を使うようなので、まあ、よいでしょう。でも、「デザイン」という言葉を濫用することでなにか物事を曖昧にしているような気もする今日この頃です。企業がものづくりにデザインの力を用いることには大いに賛同するのですが、「社会貢献」という言葉はどうも胡散臭くていけません。なにか企業の本質を覆い隠すために用いられているような気がするからでしょうか。気のせいかも知れませんが。
そういう印象を強く受けたのは、なんといっても今回の展覧会への参加企業の中に最近世間でブラックと指摘されている企業が含まれている所為でしょう。へえ、未来を変えると言いますが、あなたたちが描く未来は、はたして人間を幸せにする未来なんですか、と。いや、気のせいかも知れませんが。
いずれにしてもこの展覧会を深く鑑賞できたわけではないので、印象論に過ぎないことをお断りしておきます。
展示デザインを褒めます。
会場には企業ごとに枠が設けられているのですが、基本的にすべて同じコンセプトでまとめられています。展示会みたいに、自分たちのスペースを勝手に演出するわけではない。複数の企業がひとつのコンセプトの下でプロジェクトを提示するという方法は、いうほど容易な事ではないと思います。
各ブースにある円筒の上には、白いアクリルのドームが光っています。このドームには穴がふたつ開いている。ひとつの穴は2013年の現在の課題。もうひとつの穴から見えるのは、17年後の2030年。
↓の記事で会場の写真を見てください。
最初は「なんじゃこりゃ」と思いました。
穴から見えるのは少しばかりのミニチュア模型です。これ自体はほとんど何も語っていない。手間暇掛けて作って、これがここにある意味はあるのだろうか……と思いました。
ですが、しばらく時間が経ってから考えを改めました。
この展覧会が見せているのは、基本的に before と after の対比です。それも、実体のあるモノではなく、社会の構造とか、生活のスタイルといった部分です。モノはないけれども物語はある。それをどのように見せるのか。結局ここで見せているのはテキストなのです。17年後の物語を描いたテキスト。パネルのテキストを読む。基本はそれだけなのです。それを本のかたちではなく、ウエブ上ではなく、デザインハブという会場に足を運んでもらって、読んでもらう。そのためにどのような仕掛けが可能なのか。
穴から覗いてみただけではなにが言いたいのかちっとも分からない。でも、覗いてみるという能動的行動を促された私たちは、そこに見えたものが何なのか知りたくなる。知りたくなるから、テキストを読む。
穴から覗くという行為は、壁に飾られたものを「眺める」のとは違って、身体的な行動を促す。そうすると、なんとなく通過することができなくなる。覗いて見えたモノが分からないものであれば、知りたくなる。考えたくなる。そういう仕掛けなのだと。
「デザインあ展」でもこういう「覗いて見る」展示がありました。ポーラミュージアム・アネックスで開催されている「ミヤケマイ展」にも、そういう仕掛けがありました。
「覗く」。
とてもいいです。
以上です。
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