2012年9月28日金曜日

備忘録:問題解決の手段としてのデザイン

あるいはデザインとアートとの違いはどこにあるのか。

メモランダム。

デザインとは問題解決の手段である」というと、「デザインには問題提起の側面もあるのではないか」と返される。

このような反応については、デザインとは「問題が存在することを如何に人びとに認識してもらうかという課題」に対する造形的な解決の手段である、と考えてみたらどうかと思う。

そのような意味において、グラフィック・デザインには「問題解決」よりも「問題提起」のためのデザインが多いと思う。しかし、それはいずれも本質的にはそれは「問題の存在を如何にして伝えるか」という課題に対する「問題解決の手段」なのだ。

ポスターコンクールを考えてみれば分かりやすいかもしれない。国内外を問わずコンクールでは主催者から与えられるお題には「問題提起」が多い。「啓発」ともいう。

デザイナーがどんなに頑張ったところで、ポスターそれ自体は人口問題も飢餓も地球温暖化も解決はしない。しかし、そのような問題が存在することを人びとに知らしめたい、問題意識を持ってもらいたいという課題の解決手段にはなる。

ここで重要なのは、問題解決にせよ、問題提起にせよ、デザインのそれは「自分の内なる課題」ではなく、「他者にとっての課題」であることがほとんどな点である。おそらくデザインとアートとの主な違いはそこにある。

他者の課題を解決するからこそ、人様からお金を頂くことができる。だから、デザインはビジネスになる。

自分の内なる課題を解決するためには、自分で対価を支払わなければならない。だから、世の中のアーティストの大部分は他人からもらうお金よりも出ていくお金の方が多い。

デザイナーであっても、「内なる課題」に取り組めば、デザインとアートの境界はとても曖昧なものになる。アーティストであっても「他者と共通の課題」に取り組めば、アートとデザインの境界はとても曖昧なものになる。自分のために生み出したものであっても、それが同時に他者の問題を解決するならば、当然それに対価を支払う人びとは出てくるからである。たとえそれが問題を解決していなくても。

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上の備忘録はWIRED.jpに掲載された記事「ジョン・マエダの考える『デザインを超えるもの』」を読んで考えたこと。

左脳的な合理性と右脳的な直感とを組み合わせることがイノヴェイションにとっての鍵である。もっとも「デザイン」と「アート」を混同してはいけない。これらは異なるものであり、その違いは重要だ──デザイナーが生み出すのが「解決策(答え)」であるのに対し、アーティストが生み出すのは「問いかけ」である。解決策がわれわれを前進させる製品やサーヴィスだとすれば、問いかけは物事の目的や意味を深く追求していくものであり、時に進むべき道を見つけるために、われわれを後ろに引き戻したり寄り道させたりするものである。アーティストの問いかけは謎めいたものであることも多く、ある問いに対して、別の問いで答えるようなものもある。だからこそ、アートを理解するのは難しい。私が好んで言うのは、誰かがアートを理解するのに苦戦しているとしたら、アートはその役割を果たしているということだ。
ジョン・マエダの考える「デザインを超えるもの」 « WIRED.jp

英文も示しておきます。

Mating our left-brained technical wizardry with our right-brained humanizing intuitions is key to innovation, but don’t make the mistake of confusing “design” with “art.” I’d argue that there’s a difference, and it matters. Designers create solutions – the products and services that propel us forward. But artists create questions — the deep probing of purpose and meaning that sometimes takes us backward and sideways to reveal which way “forward” actually is. The questions that artists make are often enigmatic, answering a why with another why. Because of this, understanding art is difficult: I like to say that if you’re having difficulty “getting” art, then it’s doing its job.
If Design’s No Longer the Killer Differentiator, What Is?

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ところで、「問題提起」ではなく、問題を直接的に解決する「アート」って存在するのだろうか。もし、それが存在しないとすれば、アートとデザインの決定的な違いはそこにある、ということになる。

20121010 いくつか追記。

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