2012年9月2日日曜日

第二次こけしブーム

もうずいぶん昔なのですが、渋谷パルコで開催されたこけし展、とてもよい展覧会でした。





kokeshi pop──ポップでカワイイこけしの世界
2012/03/02~2012/03/12
PARCO MUSEUM[東京都]

大阪・梅田ロフト会場(2011/12/28~2012/01/17)には20日間で1万6,000人★1、東京・渋谷パルコ(2012/03/02~2012/03/12)には10日間で1万2,000人★2が訪れたそうです。

で、こけしがブームらしいです。
で、いまは「第三次こけしブーム」らしいです。
ということは、「第一次こけしブーム」とか、「第二次こけしブーム」もあったわけです。

「第一次こけしブーム」はどうやら第二次世界大戦の前。
ちょっと調べた範囲では、いつ頃からブームであったのかよく分かりませんでした。東北地方各地でつくられていた木製人形が1940(昭和15)年に「こけし」の名前に統一されたとのことですから、おそらくこの頃になんらかの変化、ブームがあったのでしょう。

第三次こけしブームについては、現在進行形でもありますし、ググればニュース記事等々いろいろなソースが見つかると思います。火付け役としては、写真家・詩人の沼田元氣さんや、デザイナーのCOCHAEさんたちでしょうか。
ちなみにパルコでの展覧会を企画したのもCOCHAEです。ブームの主体には若い女性が多いようですね。

第二次こけしブーム

で、第二次こけしブームです。
この展覧会についてちょっと調べたときに、合わせて第二次こけしブームについてもあたってみました。展覧会が3月でしたから、調べたのも5ヵ月くらい前なのですけれどもね。
調べてみると、現在のブームとはかなり様相が異なりました。なので、備忘録備忘録と。


こけしは泣いている?!
鳴子 投機の波 ここまで


こけしの“ふるさと”宮城県玉造郡鳴子町で七日から「第18回全国こけしまつり」が始まった。……開会前からすでに全国各地からこけしマニア約五百人がつめかけ、午前九時の即売開始と同時に主会場の同町体育館の展示会場になだれ込み、名前の知られた工人の作品を買いあさった。
……会場は熱気がムンムン。中には買い込んだいっぱいのこけしを段ボールに入れてさっさと乗用車に積み込む人たちもいる。
……”名作”をめぐってはかなりの投機性も帯びてきているようだ。
「……今じゃ木のワンや、お盆も使う家庭が少なくなり、こけしの方がよく売れるよ」と老工人は苦笑する。そして「わしのこけしを欲しがる人が多いのは、もう年で、あまり作れないのと死ねば値が出るってことかね——」と高く売れる陰でさびしそうだ。
……このまつり、昨年は三日間で三千本、今年は九日までの三日間に三千五百本を用意したが、初日並べた約二千本は午前中に七割方売れた。

『朝日新聞』1972年9月8日、朝刊、23頁。



投機ブームで即売に行列
素人・マニア・画廊
こけし”怪しい”魅力


北国の素朴ながん具として、値段も手軽で、子どもにも買えたこけしが、今では、古銭、絵画ブームのあとを追うかのように投資、投機の対象としての色合いが濃くなり、「株よりもうかる」と口にするマニアもいる。集めたこけしを売って、家を建てた、という話もあるほどだ。……希少価値の作品に狂奔するマニアたちの姿は、単なる趣味とは違った”異常”なこけしブームを浮き彫りにした。

「この工人は、右手が動かなくなったそうだ」「この作者は、もう年だし……」。会場で、こうささやくマニアたち。製作不能になったり、死ぬと、その工人の作品の値がピンとはね上がることを見越しての買い物なのだ。マニアたちの、工人についての情報収集は驚くほどという。

白石市やこけし評論家によると、ブームは四十五年の万国博覧会を境に爆発した。それまでも、国体が東北地方で開かれるたびに人気が高まっていたが、万国博会場に東北の代表的物産として展示されたことが火を付けたという。……

人気の裏では、……とっくに死んだ工人の名前を入れて、ニセモノを作ったり……。なかには、そんな人もでてきた、とある評論家。

美術品と同じようにセリ市が盛んになってきたのも最近。……古品になると何十万円という高値がつく。

『朝日新聞』1974年5月24日、夕刊、11頁。


えらく殺伐としていますね。
これらの新聞記事を見ると、趣味で集めるという域を超えて、一種のこけしバブルだったようです。

バブルの結末はどうなったのか。
残念ながら新聞記事データベースで見るかぎり、その後についてはよく分かりません。こけしを高値で買ったまま、売るに売れなくて泣いた人もいるのでしょうか。

それに比べると現在のこけしブームは和やかなもののようです。
とはいえ、戦後のこけしブームも、当初は純粋な愛好家たちの楽しみだったものが、万博を期に爆発的なブームになったわけです。
何が火を付けるか分からないのがブーム。
なま暖かく見守りましょう。



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通信販売の「千趣会」の前身が「こけし千体趣味蒐集の会」というこけし頒布会であったのは豆知識。

★1──『産経新聞』2012年3月5日、東京朝刊、東京ニュース面。
★2──『読売新聞』2012年3月22日、朝刊、17頁。

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