新宿の画材店 世界堂さんのモナリザに関する考察の3回目です。さすがにもうそれほどのネタはありません(笑)。まとめをしましょう。
1. | 現在世界堂に掲示されていて、世界堂CBカードにも用いられている「アッと驚く」モナリザ像は、1974年にはすでに用いられていた(『美術手帖』への広告→「世界堂のモナリザ 02」参照)。 |
2. | 『朝日新聞』への広告に「アッと驚く」モナリザ像が現れたのは、1978年。そのモナリザ像は、『美術手帖』のものとは異なる。 |
3. | 『読売新聞』への広告に「アッと驚く」モナリザ像が現れたのは、1994年。「アッと驚く」ほど恐ろしいモナリザ像。 |
4. | 同時期の『朝日新聞』への広告にも、『読売新聞』と同様の恐ろしいモナリザ像が用いられていた。ちょうど1990年に火災で焼失した本店が再オープンしたタイミングである。 |
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1994年5月に『読売新聞』への広告に用いられた世界堂さんのモナリザ像は非常に恐ろしかった、というのが前回の調査結果です。で、同じ時期に『朝日新聞』にはどのようなモナリザ像が掲載されていたのかを調べてみたわけですが、結果は「『読売新聞』と同じ」でしたよ。
1994年4月まではこれまで通りのモナリザでした(十分恐ろしいですが)。
5月には「アッと驚く」ような姿に……。
写真製版ではなく、ペンで描いてスクリーントーンを貼ったような表現ですな。
この激しく「アッと驚く」モナリザが新聞広告に用いられた1994年は、ちょうど現在の世界堂ビルが「グランドオープン」した年です。オープンに合わせて広告の画像も新調したのでしょうか。インパクト強すぎます。
そして、8月になって可愛いモナリザ像に変わります。
読売新聞への広告(→世界堂のモナリザ 02)と比べてみてください。広告枠のサイズが異なるので、レイアウトやトリミングは異なっています。
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同じ時期に『美術手帖』への広告はどうなっていたかというと、1974年から変わらず可愛いモナリザ像が用いられていました。1974年と異なるのは画像がモノクロからカラーになったことぐらいでしょうか。
下は、1995年の『美術手帖』への広告。モナリザが左右反転しています。
左頁に来るときは右向き、というルールがありそうです。
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以前から用いられていたモナリザ像がありながら、なぜ世界堂さんは新聞広告にかくも恐ろしいモナリザ像を用いたのでしょうか。こればかりは関係者にインタビューしてみなければわかりません。ただ『朝日新聞』への広告のあのモナリザ像が私たちに強烈なインパクトを与え、世界堂を訪れたことがない人びとにまでも「世界堂」=「アッと驚くモナリザ」のイメージを作りあげたことは間違いありません。
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意外と大きい世界堂ビル。
店舗は5階までなので、他は貸事務所でしょうか。
今のものは、CGでオリジナルを簡単に変形できるようになった最近のものだと思っていたんですが、それが一番古い広告なんですか。
返信削除それをそのまま写真では、新聞のインパクトに欠けると思ったんでしょうけど、何であの恐い顔、あの微妙な違い。朝日と読売の16年の違いも謎ですね。
それはそうと、皆が皆「アッ」と驚いてませんよね。「オッ」が多いし、カラー版はどちらかと言えば「エッ」だし、「ウニッ」とでも言っていそうなものもありますね(笑)。
やっとかめさん
返信削除1974年より以前の、あるいは他の媒体の広告にはまだ別バージョンがあるかもしれませんが、とりあえず現在のモナリザが決して新しいものではないということですね。意外でした。ちょっと調べただけでもこれですから、もっと意外な事実があるかもしれません(笑)。
>それはそうと、皆が皆「アッ」と驚いてませんよね。
たしかに。
強いていえば1994年6月、7月のモナリザの口は「アッ」かなぁ。