向かいの席の女子大生が読んでいる日経新聞にモナリザを発見。
「モナ・リザ」の最大の魅力は謎の微笑とも言われる。微笑みの先にある視線の行方も、謎の一つだろう。
「モナ・リザ」は、どこから見ても視線が合う。逆に言えば、絵を目の前にしてあちこち逃げ回っても、視線から逃れることはできない。……
で、新宿の画材店 世界堂の広告におけるモナリザの歴史のつづきです。
今回のテーマは、
世界堂の広告にモナリザが登場したのはいつ?
『朝日新聞』、『読売新聞』、そして『美術手帖』のバックナンバーを見てみました。前回は少しクリップしただけでしたが、今回はいろいろと面白いことが分かりましたよ。
最大の発見は、「可愛くなった」と思っていたモナリザがすでに1974年には存在していたことと、媒体によってモナリザ登場の時期と姿が異なっていた、ということです。衝撃画像(?)あり。新聞縮刷版をめくっていて思わず吹いてしまいました。まわりに誰もいなくて良かった。
* * *
朝日新聞から行きましょう。朝日への広告に最初に「モナリザ」が登場するのは1978年11月1日です。その前、同年10月は「修復」の広告、同9月は謎の女性像です。
そしてモナリザ初登場。このときのモナリザは左側を向いていました。
その後の右向き画像は写真を反転したものでしょうか。
1989年、迎春バージョン。「アッと驚く」が抜けています。
1991年、賀正バージョン。
読売新聞への広告にモナリザが登場するのはずっと後、1994年ですので、「世界堂」=「アッと驚くモナリザ」というわたしたちのイメージは朝日新聞によって作られた、ということになりましょうか。
ところで、これらのモナリザには「視線が常にこちらを向いている」というモナリザの特徴がないのですね。
* * *
次に読売新聞です。読売新聞への広告にモナリザが登場するのは1994年5月1日。朝日に遅れること16年です。それまでは謎の女性像と「修復」広告です。そして驚いたことに、そこには朝日新聞への広告とは異なる「アッと驚く」ようなモナリザの姿がありました。
どうですか。
こっち見てますよ。
あなたはこの視線から逃れることができますか。
つづく6月の広告。
…………。
同年7月にも同じモナリザの広告。
さすがにこれはイカンと思ったのでしょうか(想像)、1994年8月1日にはずっと可愛いモナリザの半身像に変わりました。
その後は、このバージョンが続いたようです。そういえば、このモナリザ像は1995年の朝日新聞への広告でも用いられていました(世界堂のモナリザ 01 参照)。ですので、このあたりの変化をもう少し調べてみる必要がありそうです(笑)。
* * *
図書館に行ったついでですから、『美術手帖』のバックナンバーも調べてみました。で、ありました。『美術手帖』に最初にモナリザを用いた広告が出されたのは、1974年3月です。朝日新聞への広告よりも4年早いですね。そしてこれまた驚いたことに、額縁に入ったモナリザの半身像は現在世界堂さんに掲出されているモナリザ像とほぼ同一だったのです。
1974年3月のモナリザ。
参考画像(店頭で配布しているカードから)。
約20年後、1993年のモナリザも変わりません。
というわけで、べつに世界堂のモナリザは最近リファインされたというわけでもなかった、ということになります。へえ。
なお、世界堂さんは『美術手帖』に3ページの広告を出していますが、1ページ目の背景には過去の新聞広告の切り抜きが用いられています。
このウェブログで取り上げた以外にもいろいろなバージョンの広告がありそうですね。世界堂さんに聞けばもっと詳しいことが分かるかもしれませんが、まあそこまでは……(それに1990年の火災で過去の資料が焼失してしまったかもしれません)。
つづきます。
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